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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

古屋誠一 メモワール. 「愛の復讐、共に離れて…」@東京都写真美術館 2010年7月4日(日)

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一般の入場料は800円だが、ディスカウンターで250円で購入済み。
梅雨の晴れ間もあってか、場内はまずまずの人の入り。

入場して先ず目にするのは、遺影。
長尺な法名と共に写っているのは、
眼に異様な光を湛え、病的に痩せこけた、外国人の女性。
これにより我々は、彼の妻が既に故人であることを知る。

次いで、子供の誕生を示す写真。
撮られた年月と照らし合わせると、
彼女の病気療養の意味もあったのだろう。
が、息子の成長に逆らうように、
彼女の顔からは明るさが消え、
次第に表情さえ失われて行く。

作品は過去に遡るように展示され、歩を進めるうちに
輝くように微笑む彼女が飛び込んでくる。

「後ろ向きに歩けば、時間が昔に戻るんだよ。」

今度は逆に歩いてみる。
しかし、なまじ結末を知っているのだから、
何て悲しいストーリー。

私小説は日本独自のジャンルとする説もあるようだが、
一連の作品は妻の姿を借り、写真という表現手段の、
『古屋誠一』の私小説なのかもしれない。