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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

秘密7:清水玲子

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最新の第7巻は最厚、と言うのが惹句だが、
おっとどっこい、これは〔秘密〕の(現在までの)最高傑作である。

先ず、幾つかのピースが、バラバラに提示される。
拉致被害者の家族会だろうか、突然の離脱を表明する初老の男性。
一転、高校生くらいの少女が誘拐されるシーン。しかし、彼女の生死も含め不明である。
そして、民家の玄関先。ここでも、同家の娘が誘拐された(らしい)ことが暗示される。

これらの背景に潜んでいるある出来事を中心に、激しく回転しながら物語は展開。
しかも様相は二転三転し、辿り着くのは驚愕の結末。

いや、素晴しい。ゆるゆると進めるつもりだったが、一気呵成に読了してしまった。
家族とは、血の繋がりとは、国の隆盛と命の重さ、という複数の、ある種深遠なテーマを
一つのストーリーで纏めてしまう力量は見事である。

元々、人の脳から記憶を取り出し可視化する、というアイデア自体は古くからあるものだから
(〔ブラック・ジャック〕にも死んだ人の角膜に、彼女が見た最後の瞬間が焼き付いていた
という作品、あったしな)、それを利用して解決される事件の主題が肝なわけだ。

過去、泣ける作品は多くあったが、今巻は余韻も含め、すこぶる重い。
常にも増しての大コマの多用、『薪 室長』の感情の不安定さ、といった一部不可解さはあるものの、
本作の価値を貶めるものではない。

あと思った。これ映画化向き。
それ以外の巻から、小さなストーリをプロローグ的に取り込んで、
一連の作品として脚本が作れれば、素晴しい作品になるかと。