RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

私の中のあなた@109シネマズ川崎 2009年10月10日(土)

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【シアター3】のキャパは121席と、さほど大きな劇場ではないが、
中はほぼ満席。たいしたものだ。やはりカップルが多いかな、老若問わず。

監督の『ニック・カサヴェテス』は、
父親『ジョン・カサヴェテス』、母親『ジーナ・ローランズ』。
二人の共作〔グロリア〕は、兎に角、スピード感溢れる、カッコイイ映画だった。

打って変わって、本作は両親の片鱗を微塵も感じさせない、
押さえた静かな映画。
泣き所たっぷりで、ティッシュが必携との触れ込みだが、さて如何か?

『アナ』は白血病の姉『ケイト』のドナーとされるべく、
体外受精卵子を選別された末に生まれて来た。
”臍帯血””血液””骨髄”等、様々な提供を受け入れてきたが、
13歳になった時に『腎臓』の移植を求められ、
それを拒否するために両親を相手に訴訟を起こす。

主な登場人物は、他に『母(キャメロン・ディアス)』『父』『兄』、
そして『母の妹』。
映画は主要人物各人のモノローグから始まる。
カットバックを併用して、こと此処に到った経緯が語られる。

時代は経年になっておらず、話者もころころと変わるのだが、
監督の手腕だろう、違和感無く時系列化できる。

原題の〔My Sister's Keeper〕の方が、
(当たり前だが)内容を体現して絶妙だが、
『母』以外の登場人物は、力点が分散して、存在感は希薄である。
登場人物に感情移入できず、何と無く引いた目で見てしまう。

『アナ』は自分の存在意義に深く懊悩するわけではない。
また両親も、彼女を生んだ経緯を不自然にはとらえていないようで、
一般の感情からすると違和感が残る。
それとも、追い詰められた人間は、皆こうなってしまうのだろうか。

唯一『キャメロン・ディアス』のみが、
『ケイト』のために自分の職を含む全てを擲ち、
家族にもそれを強要する”Keeper”としての存在を体現する熱演である。

正直言って、観終わっても、涙の一筋も流れなかった。
泣かせる仕掛けは満載だが、最後まで醒めた目で見てしまった。

とは言うものの、映画の出来自体は悪くない。
移り行く四季の描写も素晴しい。
何よりも、死の淵にいる『ケイト』を、本人の希望で浜辺に連れ出し、
家族揃って半日を過ごすシーンは悲しくも美しいし、素晴しい。
勿論、”Keeper”である『母』は最初反対するのだが、
それを振り切る『父』が、本作中唯一見せた存在感の場面でもあった。