RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

空気人形@チネチッタ川崎 2009年10月10日(土)

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ポイントカード割引の御陰で、
映画の選択の幅が広がる。
今日の一本目は、予告を観ただけで思わず泣けそうになった〔空気人形〕。

【CINE7】のキャパは244席だが、客の入りは二~三十人程度。
ま、朝イチだし、”R15+”だし、こんなものか。

人形に(無理矢理)心を持たせてしまう映画
あったが、本作は心を持ってしまうところがキモ。


冴えない中年男の『秀雄』がもっていた空気人形(「ラブドール」っていうの?)の
『のぞみ(ペ・ドゥナ)』が、突然心をもって動き出す。
街に出た『のぞみ』は『純一(ARATA)』が働くレンタルビデオ屋で、
アルバイトを始める。
『のぞみ』は『純一』に次第に好意を持つようになる。
『秀雄』も含めた三人の関係は、どうなって行くのか・・・・。

周囲の登場人物は、肉体的には詰まっているのに、心が空虚。
”空気人形”とは逆(カラダは空だが、心が満ちている)であることが併行して描かれる。


余人を以って代えがたい、という言葉がある。
〔ただ、君〕の『宮崎あおい』がそうだったが、
本作での『ペ・ドゥナ』も正しく、それに当たる。

常人離れした大きな瞳、たどたどしい日本語、
今にも地を離れて行きそうな、独特の浮遊感。
生まれたばかりの無垢さを感じさせる雰囲気。
ほっそりとした体型。心を持ち始めた人形そのもの。
彼女のために作られた役・話ではないかと思わせる。

心を持ち、動き出す瞬間の描写が秀逸。見るもの触るもの、全てが新鮮。
押さえたカメラワークが、更に良い雰囲気を醸し出している。

人形ならではの痕跡を消そうとする、また色々な知識を得ようとする、
その行いが何ともいじましい。
楽しい時間を過ごしながらも、自分が代用品であること、
周囲とは違う存在であることの意識に苛まれる。

余情のあるラストは、想定もできなかったが、
これ以外には有り得ない展開かもしれない。
物理的な涙は出ないけれど、心が激しく慟哭する秀作。