RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

映画「黒部の太陽」全記録:熊井啓~読了

黒部の太陽〕という映画がある。幻の映画と言われている。
1968年に公開されたが、その後、完全版の再映はされていない。
勿論、ビデオ化もDVD化もされていない。
その間の事情については、まことしやかなことが巷間言われているが、
真偽の程は判らない。


イメージ 1
本書は、当該映画の監督である『熊井啓』が、その製作過程を書き綴ったものである。

中は大きく分けて三部からなっている。
1.クランクインまで
2.クランクインからアップまで
3.シナリオ集

「クランクインまで」が全体の1/4、「クランクインからアップまで」が同じく1/4、
残りの1/2が「シナリオ集」、という構成。

映画が撮影された現場の描写は~巨大なセット作りの過程・主演俳優(石原裕次郎)の怪我
といったハプニングの頻出・スケジュールの遅延、等等~勿論、迫真に満ちている
(実際、『トワイライト・ゾーン』では主演俳優:ヴィック・モローが
撮影中の事故で亡くなっているしな)。
寧ろ、この本の白眉は、クランクインまでの紆余曲折が、初めて当事者の口から語られたことに有る。

過去「五社協定」というものが、有った。自社で育てた監督やスターを、
他社からプロテクトするためのシステムと仄聞している。
これが、石原・三船といった独立プロダクション、そして監督自身の前に立ちはだかる。
それをどのように打破して、クランクインまで漕ぎ着けたか・・・・。


ただ、文章でどのように詳細に描写されても、映画が本来持つ迫力には敵う術も無い。
主演俳優達が亡くなってからも随分と年月が経つ。
もう、ぼうちぼち、大画面の映画館での、完全版の再映を望みたいものだ。